こんにちは!
パーソナルトレーナーの塩入です。
今回は、肩関節複合体というちょっとカッコいい名前の組織について、機能解剖学と運動学の観点から紹介します。
ふわっと肩関節の事だと考えていただいてOKです。
肩関節複合体は、4つの骨、3つ(5つ)の関節、17種類以上の筋肉で構成される、最も複雑で不安定、そして特別で魅力的な関節です。
4つの骨、3つ(5つ)の関節
〇肩関節複合体は以下の4つの骨からなります。
・上腕骨:上腕の骨です。太くて硬い。肩甲骨との間に肩甲上腕関節を形成します。
・肩甲骨:胸郭上を滑るように動きます。上腕骨及び鎖骨とは関節で繋がっています。
・鎖骨:肩甲骨が胸郭上で無理なく動けるように、環境を整えます。
・胸郭:肋骨のこと、背中側を肩甲骨が滑ります。
〇同様に、肩関節複合体は以下の3つ(5つ)の関節からなります。
まずは、一般に関節とされているものから
・肩甲上腕関節:肩甲骨と上腕骨からなる関節です。肩甲骨側のポケット(関節窩)に、上腕骨の骨頭がはまる形になっています。代表的な作用は上腕骨の屈曲(万歳)です。肩関節複合体の中では堅固な関節です。
・肩鎖関節:肩甲骨と鎖骨からなる関節です。こいつが前後左右に動く&回旋することで肩甲骨も動きます。肩甲骨が動けば肩甲関節窩(上腕骨の骨頭を収めるポケット)の向きが変わり、上腕骨の可動範囲が広がります。三節棍をイメージしてください。
・胸鎖関節:ほとんど動きませんが、ちょっと滑ります。ちなみに猫は鎖骨が動きますが、犬は完全に固定されていますので猫パンチが出来ません。人間は猫より更に広い可動域を持っています。
次は、関節ではないものの実質関節とみなせるよね、というものです。(機能的関節)
・肩甲胸郭関節:肩甲骨は背中側の肋骨面をすべるようにして動きます。上腕骨が屈曲(万歳)するとき、肩甲関節窩は斜め上方向かつちょっと後ろを向かないと、上腕骨は万歳の位置まで移動できません。このため、肩甲骨は関節窩が斜め上方向かつちょっと後ろを向くように滑ります。これが肩甲骨の上方回旋、後傾及び外旋という動きです。
・第二肩関節(肩峰下関節):上腕骨骨頭があらゆる方向に転がったり滑ったりするために、肩峰下(鎖骨と上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩の間の空間)には遊びのための空間があります。これは機能的にはベアリングと同じです。各関節が機能的に動かなければこの空間が消費され、0になると骨が筋肉を挟みこんだりして痛みの原因になります(インピンジメント)。
17種類の筋肉
〇肩甲上腕関節
・ローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)
これらの筋肉は、肩複合体の運動にとっては、「上腕骨骨頭の肩甲骨関節窩に対する求心性を保つ」目的で存在します。これは、「肩甲骨運動+鎖骨運動と共同し、第二肩関節(肩峰下の空間)を保つ」こととほどんど同義です。求心性とは何でしょうか?関節を動かすとき、関節窩内の骨頭は転がったり滑ったりします。

転がるだけでは関節窩から骨頭がはみ出してしまうからです。はみ出た骨頭は衝突します(求心性の破れ=肩峰下の空間の消失)。これらの筋肉は、転がりと滑りの度合いを制御し、関節窩内に骨頭を位置し続けるようにします(求心性の維持)。
・表層の筋肉
表層には、三角筋(前部・中部・後部)、大胸筋、広背筋、大円筋、烏口腕筋、上腕二頭筋(長頭)、上腕三頭筋(長頭)がありますが、すべての説明は省きます。
烏口腕筋、上腕二頭筋長頭、大円筋は関節の内旋(上腕骨を内側に捻る働き)作用を持つため、トラブルを起こしやすい筋肉です。上腕骨を持ち上げる挙上や外転などの動きでは上腕骨は外旋しますが、これらの筋が短縮し外旋が不十分だと、大結節(上腕骨の出っ張り)が肩峰下面に近づきインピンジメントを引き起こします。
〇肩甲胸郭関節
・上方回旋(+それに伴う後傾、外旋、場合により挙上)を行う筋
※右の肩甲骨として記述
上腕骨が外転すれば、肩甲骨は上方回旋します。肩甲骨の下角は外へ、上角は相対的に内へ移動しながら胸郭上を転がるような回転運動を行うのです。これにより、肩甲関節窩の向きを上腕骨にとって最良の位置にすることが出来ます。
前鋸筋の中部と下部が肩甲骨の下角を外側に、肋骨面に吸い付くように前外側へ移動させる(外転/前方突出)と、同時に肩甲骨の後傾と外旋が起こります。僧帽筋の上部は首側から鎖骨の外側を介して肩甲骨(の右端)を引き寄せ、僧帽筋の下部は肩甲棘内側(左上のあたり)を下方に引っ張ります。この局面において、菱形筋は、肩甲骨内側縁を胸郭上に固定させ、前鋸筋による前外側へ移動が単なる平行移動(回転を伴わない滑り)へ破綻することを防止します。
・下方回旋、下制、内転、後傾を行う筋
上腕骨を体に引き付けるとき、肩甲骨は下方回旋します。この時、下制、内転、後傾を伴う運動パターンが、上腕骨骨頭の求心性維持+肩峰下スペースの保持という観点で最も有利になります。
菱形筋は肩甲骨の内側縁を斜め上から引っ張り、かつ内側縁を胸郭に押し付けます(その際、軽度内転します)。下方回旋の主要なトルクを提供するとともに、肩甲骨が胸郭上を滑走するための力学的条件を整えることを意味します。中部の僧帽筋は、菱形筋とともに後者の働きを担います。この時、前鋸筋は、前方外側に向け肩甲骨を押し出すことでこの力に対抗し、過剰な内転を阻止します。
肩甲挙筋は上角を頸部方向に引き、肩甲骨を下方回旋させつつ挙上させます。また、小胸筋は烏口突起を介して体幹の前側から作用し、肩甲骨に前傾および下制トルクを与えます。僧帽筋の下部は肩甲骨の上角付近(肩甲棘内側~基部の辺り)をほとんど真下に引き、わずかに上方回旋方向のトルクを発生させつつも、小胸筋の前傾トルク、肩甲挙筋の挙上トルクを打ち消し、強力な下制筋として働きます。
胸椎が伸展している場合、僧帽筋の下部は肩甲骨を後傾させる作用を持ちます。前鋸筋は、菱形筋や中部の僧帽筋の力に対抗し、肩甲骨の下角が胸郭上から浮き上がらないようにします。この結果、肩甲骨は胸郭形状に沿って自然に後傾しやすくなり、肩峰下スペースの保持に寄与します。
〇肩鎖関節と胸鎖関節
挙上:鎖骨の外側を挙上させるのは僧帽筋上部です。概ね後頭部後方に向けて斜めに引っ張ることで、肩甲骨が上方回旋するための条件を整えます。鎖骨の挙上は後方回旋の前提条件(肩峰の後上方退避)であり、後方回旋が出来なければ肩甲骨の上方回旋に必要な肩峰下スペースを確保できません。
鎖骨の内側を挙上させるのは胸鎖乳突筋です。両側収縮時に鎖骨を上に持ち上げることで、胸郭上部を開き肺が膨らむスペースを作ります。この作用は呼吸運動、とくに努力性吸気時に顕著となります。
下制:これらの動きを抑制し、鎖骨を固定する筋肉として鎖骨下筋があります。また、腕を下に垂らした体位では、大胸筋上部(鎖骨部)もこの働きを持ちます。
前方突出:大胸筋上部は鎖骨の外側を前方にスライドさせることで、肩甲帯全体を前方に押し出し、上肢が体幹前方で作業する体勢を整えます。
後方回旋と後退:この二つの動きをする筋は、面白いことに直接存在はしません。上腕骨挙上により肩甲骨に対し上方回旋の要求刺激が伝わります。この際、肩甲骨側の運動が、肩鎖関節を通じて伝わり鎖骨の後方回旋を、また、肩甲骨の内転成分が肩鎖関節を介して鎖骨外側を引くことにより、胸鎖関節において鎖骨の後退を発生させます。
いかがでしたでしょうか?
本日はマニアックに、解剖学と運動学の観点から肩関節複合体について説明をしてみました。
この関節可動域こそが、人類に投擲や「手を伸ばして掴む」行為の土台を提供したと思うと、面白いですよね
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